
先日ブログでもお伝えしておりましたが、和田本部長の執筆内容が掲載された全国老人保健施設協会機関誌「老健」6月号が発行されました。
執筆内容については「現場からのオピニオン~介護現場はいま~」というコンテンツに「長寿介護に必要なもの」というタイトルで掲載されております。
介護事業・施設運営において課題となるサービスアプローチ、また、人財(材)育成面についてスポーツ振興とも繋げたものとなっております。
今回は、その内容を全文ご紹介させていただきますのでよろしければご一読下さい。
(以下、全文)
長寿介護として必要なもの
全老健和歌山県支部代議員
介護老人保健施設やよい苑
施設長 和田好史
高齢者介護におけるターニングポイントととらえる2015年を間近に控え、老健施設における役割についても、今後多様なニーズへの対応が求められることは現に周知のとおりである。
特に老健施設の代名詞である在宅復帰を目的としながらも、看取り機能を兼ね備えていくところなどは、よりその現状を顕著に感じられる部分といえる。
また、介護保険制度についても高齢者人口がピークに達するとされる2025年を見据えた地域包括ケアシステムの構築に向け、国・地方自治体が一体となりその形を変化させようとしている。
しかし、その一方で介護サービスを提供する側に視点を置き換えてみると、加算が創設されたものの、介護職員の処遇改善は当初の見解には至らず、人材確保の難渋も重なり、疲弊感すら生み出しかねない状況である。
これは予測からなる方針と、現場における現実的な部分での不一致が改善されていない証拠であり、結果的にはサービス受給者に対して不利益として反映されてしまう。
「制度があっても中身なし」とはまさにこのことで、こういった部分において財政面も含めた制度と現場のギャップを縮める改善を早急に行うことが、これからの高齢者介護の充足の基礎につながると確信する。
そして、更に大切と考えることは「高齢」という言葉の発想転換である。
書物などのデータベースには「高齢化」「超高齢化」など、年を重ねることに対し、一種の問題視的な表現が掲載されている。
人口推移などについては把握できており問題となる要素も理解しているが、過去の日本のように年を重ねることを英知と考え「高齢化」という言い回しを「長寿化」と換言した場合どうであろう。
当法人ホームページで私の挨拶文にも書いているが、これはもちろん小手先の表現ではなく深い尊敬の念を込めての言葉である。
やよい苑が開苑した当時は、高度成長期を支えてこられた方々への恩返しへの意味でも、十分なサービス提供を行うことを目的にしてきた。
時代は変わったが、世の中のためにそれぞれの年代を必死にがんばって来られた方々への恩返しは今も忘れずに老健施設としてのサービス提供を続けている。
介護分野においても専門性を重視し、介護プロフェッショナル段位制度の構築や認定介護福祉士、またリスク管理面などについても専門的な資格が生まれてきている。
多様なニーズに対応するためには、スキルアップ及び専門リーダーの配置のため資格取得は必須となる。
また、昨今の介護分野においては、職業難などからさまざまな業種を経験した就業者も少なくない。
ケアバランスを保ち、チームアプローチを拡充するためにも専門的見地とともに感謝、敬愛の心を学ぶことも必須とすれば「高齢」ではなく「長寿」のためのケアサービスが活き、老健施設の存在価値も高まると考える。
やよい苑では、「人材」を「人財」として認識することが安定したサービス提供の要になることを念頭に置き重要視している。
例えば、スポーツ振興である。
法人内ソフトボール部等の従来のスポーツ競技部に加え、平成21年度より私が自ら監督を務め、アーチェリー競技部を創設。
昨年度は全日本実業団選手権大会において団体準優勝を果たし、平成27年に和歌山県で開催される「紀の国わかやま国体」では県強化総監督として、昨年のロンドンオリンピックで個人銀メダルを獲得した古川高晴選手、そして当法人の代表選手達とともに総合優勝を目指している。
一見、スポーツ競技と老健施設の運営とは無縁のように思えるが、メンタルトレーニングやコーチング・指導方法等、各世代の志向などにおいてさまざまな部分で精通するところがあり、職員への各種研修やアプローチ等の場面で非常に役立っている。
また、施設長という立場と監督という立場それぞれから得たものを融合させ、その時々に必要な情報を職員や選手に提供するとともに、結果のみならず経過をも重要視した評価を続けることが、サービスを提供する上においてもスポーツ競技の練習や試合においても、常にベストな状態を保てる根幹であると考える。
このような観点から、あらゆる角度から当施設の職員と接する時に「人財」としての大切さをあらためて実感し、これまでの形にとらわれない新しいとらえ方、いわゆる「イノベーション概念」がこれからの老健施設における運営、また「人財」の創出に必要であることを痛感する。
今後の情勢として、「保護型介護」ではなく「自立支援型介護」「予防型介護」への転換をさらに推し進めることが必要とされている。
老健施設においてもさらなるサービスの詳細化が図られることになると考えられるが、人として大切な部分をどう伝え、それを日常サービスにどうつなげていくかが「長寿介護」における将来のあるべき姿に近づく第一歩であると信じている。

(以上)
それぞれにおいて非常に考えさせられる内容が掲載されており、今後益々、多様化する時代に対応する為にも広い視野や柔軟な考えが必要になってくると感じました。
今後も医療・福祉に携わる法人スタッフとして、発想転換・「人財」の創出を念頭に置き広い視野で物事を見ていきたいと思います。
投稿者:広報委員長・イニシャルD